理論的基礎
GROWSメソッドはあなたに適しているか?
GROWSメソッドは、長年の公開/非公開の研究と実証分析に基づいており、パフォーマンスの高いソフトウェア開発組織の構築に役立つだろう。ここでは、我々のアプローチの重要な理論的要素のいくつかを紹介する。
やるべきことは多い。一夜にして到達することはできない。だが、その道を示すことはできる。我々はそのためにいる。
スキル習得のドレイファスモデル
ドレイファスモデルとは、あるスキルが初心者から熟練者に成長するにつれて、人間の行動や認知がどのように変化するかを示したものである。我々は、チームメンバーのスキルレベルや経験に応じて、習慣やアドバイスを適切なものにするために、ドレイファスモデルを使用および調整してきた。
ドレイファスモデルで最も重要なのは、初心者(どのようなスキルであっても)には具体的で文脈に依存しないルールが必要というところだ。このアプローチは初心者にとっては効果的である。だが、これらのルールに固執すると、初心者のスキルレベルに制限されてしまう。つまり、上達できないということになる。
ほとんどの方法論やプロセスはルールを提供している。だが、それで終わりになっている。
GROWSメソッドでは、さまざまなスキルレベルに応じた習慣と、より複雑で重要な側面を扱う思考ガイドを提供している。
ヒューマンシステムダイナミクス
ヒューマンシステムダイナミクス(HSD)とは、複雑系科学のレンズで行動を調査するものである。その基盤には以下の前提が含まれている[@Holladay:2008]:
- 組織は、自身を維持することを目的とした複雑なシステムであり、そのために反応性と適応のパターンを構築する。
- システム内部の制約によって、システム内で発生するアクティビティや相互作用の種類が決まる。そのためには、柔軟でサポート力のあるチェンジリーダーが必要になる。
- パターンの基礎となるダイナミクスが変化してシステム全体の応答性と適応性を高まったときにシステムの変化が発生する。
- 創発的な自己組織化システムにおける行動や振る舞いは、シンプルなルールによって決まる。
- システムがそれ自体を維持する能力は、適応アクションの繰り返しサイクルに依存する。
複雑系適応システム(企業、プロダクトグループ、チームなど)では、エージェント(上司、その上司、チームメイト、あなたなど)同士がパターンを生成しながらやり取りをする。これらのパターンは時空を超えて意味を持つものであり、コンテナ(フォーカスを含むもの。たとえば、職業、チーム、建物など)、コンテナ内およびコンテナ間の差異や類似点、交換、価値の流れ(情報、リソース、仕事、権力)に基づいて生成される。
クネビンセンスメイキングフレームワーク
(図はDave Snowdenによる。CC BY-SA 3.0)
クネビンモデルは、以下の5つの異なる意思決定の領域を示している。
- 明確(Obvious):「既知の既知」。状況は安定しており、原因と結果の関係は明らかである。つまり、Xを実行すると、Yが期待できる。
- 煩雑(Complicated):「既知の未知」。原因と結果の関係には分析や専門知識が必要。さまざまな正解が存在する。
- 複雑(Complex):「未知の未知」。原因と結果はあとから推測するしかない。正解は存在しない。ユーザーの行動そのものが予測不可能な形で状況を変えるため、このシステムは還元主義的なアプローチの影響を受けない。
- 混沌(Chaotic): 「緊急事態」。物事は活発に燃えている。因果関係は不明。緊急事態であり、まずは「止血」が先決。
- 無秩序(Disorder): 「無知」。どの領域で活動しているのかがわからない。図の中央にある暗いエリアのこと。ここでの意思決定は間違っている可能性が高いため、非常に危険である。
「明確」の領域では、スクラムやウォーターフォールでもうまく機能する。
「煩雑」な領域では、さらにアジャイルなアプローチが必要である。
「複雑」な領域では、さらに高いレベルのスキルや能力が必要である。GROWSメソッドは、あなたとあなたのチームが「複雑」な危険な海を乗り越え、「混沌」に陥るのを避けるのに役立つ。
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